高血糖は様々な健康問題を引き起こす可能性があります。血糖値とHbA1cの基準値を解説し、糖尿病の合併症や境界型の危険性、また隠れ高血糖が及ぼす影響について解説しています。血管への悪影響を防ぐため、早期発見と対策の重要性を強調しています。
目次
糖尿病の判定基準
日本では、以下の2つの基準値等で、糖尿病は判定されます。
- 空腹時血糖値
10時間以上何も飲食していない状態で測定する血液中のブドウ糖濃度のことです。この数値により、体が通常状態でどのように血糖をコントロールしているかを評価できます。 判定基準は以下の表の通りです。
血糖値(mg/dL) | 100未満 | 100以上、110未満 | 110以上、126未満 | 126以上 |
判定 | 正常型 | 正常高値 | 境界型 | 糖尿病型 |
- HbA1c(ヘモグロビンA1c)
血液中の色素(ヘモグロビン)とブドウ糖が結合した物質で、過去1~2か月の血糖の平均的な値を示す長期的な指標です。一時的な血糖値の変動に左右されないため、より安定した評価が可能です。 判定基準は以下の表の通りです。
HbA1c | 5.5%以下 | 5.6 ~ 5.9% | 6.0 ~ 6.4% | 6.5%以上 |
判定 | 正常型 | 正常高値 | 境界型or糖尿病型 | 糖尿病型 |
糖尿病とその影響
糖尿病は、血液中の糖分(ブドウ糖)を筋肉などの組織に取り込むよう働きかけるインスリンというホルモンの分泌が減少したり、インスリンの働きが低下したりすることで起こります。これにより血糖値が慢性的に高い状態が続き、体の様々な部位に悪影響をもたらします。
血糖値が高い状態が続くと、体中の血管が徐々に傷つけられ、以下のような様々な合併症を引き起こす可能性があります:
- 網膜症:目の網膜の血管が傷つき、視力低下や失明の原因となります
- 腎症:腎臓の機能が低下し、最終的には人工透析が必要になる場合もあります
- 神経障害:手足のしびれや痛み、感覚異常などの症状が現れます
- 心血管疾患:心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高まります
糖尿病の症状や検査値に心配がある場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。
境界型(糖尿病予備群)の重要性
糖尿病の診断基準に達していなくても、「境界型」と呼ばれる状態では注意が必要です。この段階では明らかな症状がなくても、体内では既に変化が始まっています。
境界型の特徴と注意点:
- 境界型の状態が続くと、数年後に糖尿病へ進行するリスクが大幅に高まります
- 日本糖尿病学会のガイドラインによると、境界型の段階から既に動脈硬化性疾患(心筋梗塞や脳卒中など)のリスクが上昇し始めることが指摘されています
- 境界型は「沈黙の状態」とも言われ、症状がないため見過ごされがちですが、体内では徐々に変化が進行しています
隠れ高血糖の危険性
「自分は糖尿病ではないから関係ない」と考える方も多いかもしれませんが、定期的な健康診断で「正常」と判定されていても、日常生活の中で知らないうちに「隠れ高血糖」の状態になっている可能性があります。
隠れ高血糖とその影響:
- 食後血糖値が一時的に正常上限を超えて140~180mg/dL程度まで急上昇する「食後高血糖スパイク」が繰り返されると、その都度タンパク質の糖化反応が促進され、細胞が傷つけられます
- 高血糖の状態が長く続くほどタンパク質の糖化は進行するため、糖尿病と診断されるほどではない「軽度の高血糖」状態であっても、それが慢性的に続けば組織へのダメージが蓄積していきます
- 健康な人でも食後に血糖値が急上昇したり、やや高めの血糖状態が続いたりすると、知らないうちにタンパク質の糖化が進み、将来的な健康リスクを高める可能性があります
問題は、通常の健康診断で行われる空腹時の血糖値検査では、このような食後の「隠れ高血糖」を発見することが難しいことです。そのため、より詳細な血糖値の変動を知るためには、持続グルコース測定(CGM)のような連続的に血糖値をモニタリングできる方法が有効です。